すると、昂は二人に向かって話を始めた。


「沙菜さんは今日一日、ずっと作り笑いで笑っていました。沙菜さんはなかなか自分の感情を外に出さない性格からか、本音はほとんど言いません。中学から一緒の俺にも行ってくれないことがあります。そして、今回も何も相談なしに一人で抱えていました。家族の事情なので、口を出せることではないとわかっていますが、少しは甘えてくれてもいいんじゃないかって思うときがあります。・・・俺は毎回毎回、沙菜さんには助けてもらっています。今日も義理の母と時間はかかりましたが、向き合うことができました。沙菜さんがきっかけを作ってくれたんです。沙菜さんがいなければ、これからもずっと向き合うことができなかったと思います。俺は、沙菜の支えになってあげたい。沙菜をこんな風に育ててくれたお二人にも、沙菜の力に、支えになってほしいです。沙菜は強いように見えて、とても弱く、もろいんです。お二人が思うほど、沙菜さんは強くありません。どうか、正面からぶつかってあげてください。そして、沙菜が崩れそうになったら、支えてあげてください。お願いします」


昂は静かに、深く、頭を下げた。


私は昂の言葉の途中から涙が止まらなかった。


私のために・・・


ここまでしてくれた。


「君・・・


「私、昨日言ったこと嘘じゃないよ。二人は何も悪くない。これは、家族で向き合わなきゃい
けない問題なんだ。誰が悪いとかじゃなくて、三人で解決策を考えたい・・・です」


私は、お父さんの言葉を遮って、飛び出し、昂の隣で頭を下げた。


頭の上にはぬくもりのある温かい手。


大きな、なんでも包んでくれる大きな手。


お父さんの手だ。


私はゆっくり頭を上げた。


「ごめんな。沙菜。俺たち、沙菜にちゃんと向き合えてなかったな」


「もう一度、三人で話し合いましょ」


お母さんは私の肩を右手で優しくなでた。


その瞬間、さっき止まった涙がまた私の目から流れた。


その涙を左手で拭ってくれるお母さん。