第1巻 Sicario ~哀しみに囚われた殺人鬼達~

白虎はギフトの方に体を向ける。
腕を組んで、柔らかく微笑んだままで。


「それで、ギフトちゃんが私の所に連絡無しで来るなんて如何したの?頼み事?」

「察しがよくて助かるよ。白ちゃん。」


ギフトはドールの背中から降りた。
白虎の目の前に立つ。


「サラフィリアをあげに来た。白ちゃんにとって悪い話じゃないと思うんだけど...如何かな?」


白虎は呆気にとられた顔になると、急に笑い出した。
お腹を抱えて笑った。かなりツボに入ったようだ。

笑いが収まると息を整え、笑い泣きで出たの思われる涙を指で拭い取る。


「久しぶりに大笑いしたわ。でもいまいち私達の利益が解らないわ。」

「あれ?解らない?白ちゃんも年かな。簡単な話じゃないか、僕達からサラフィリアという人員を受け渡すって言ってるんだよ。つまりは白ちゃんの部下にするって事。」

「それじゃ、ギフトちゃん達の利益がないじゃない。無償でそんな事するとは思えないわ。」


ギフトの口角が上がった。


「利益ならあるさ。サラフィリアという原因物質が無くなる事によって、僕達は日常、平凡を取り戻せる。...白ちゃん、決して効率や経済面が潤う事が利益じゃないんだよ。」


白虎が飽きれたように苦笑を漏らす。
自身の腰に手をあてがうと、仕方無いといった笑みを浮かべる。


「本当、口だけは達者なんだから。」


ギフトが押し切ったようだ。
口だけならギフトの右に出る者はいないだろう。
少なくとも俺は知らない。

突然、店の奥から足音が聞こえてきた。