第1巻 Sicario ~哀しみに囚われた殺人鬼達~

瞼を閉じて心を穏やかにする。
嗚呼、眠る事は素晴らしい...俺はつくづくそう思った。
もう少しで完全に眠りに入る時、突然近くで大声が聞こえた。


「おいッ!!手前ェら!!大人しくしやがれ!動くんやないぞッ!!!」


その声と共に俺はディーブに髪を引っ張られた。
嫌でも瞼が開く。
視界がはっきりしてくると、目の前に威勢のいい女が、物凄い形相で怒鳴り散らしているのが見えた。


「勝手な事すんじゃねぇぞ!この電車を爆破しちゃるかんなッ!!」


辺りを見回すと乗客は全員血相を変えて怯えていた。
俺とディーブは大して驚くこともなく、女を見ていた。

この女...何処かで見た気がするのだが、生憎思い出せない。
自分の記憶力の無さを痛感した。


「いいか!全員ウチの言う通りにしてもらうかんな!!」


随分と調子に乗っている女だな。
今すぐ再起不能にしてもいいが、爆破されたらひとたまりもないので、静かにしておく。

にしても、この女...俺は何処で見かけたのだろうか。
金髪に黒のメッシュ、ピエロのような奇抜なメイク...。
あ、...思い出した。

ニュースで見た爆弾魔___サラフィリア・マークだ。