第1巻 Sicario ~哀しみに囚われた殺人鬼達~

俺は引っ張られて痛い頭皮を押さえつつ、ディーブの腕を掴んだ。


「解った!解ったから、髪引っ張んな!!連れてってやるから!!!」


そう言うとディーブは満足したのか、髪の毛を離してくれた。
ディーブの手には俺の長い髪の毛が、2~3本握られていた。
嘘だろ、ディーブ...。
まだ痛む頭皮を優しく押さえながら、ディーブの方を見る。


「10:00から電車でサウリリス街に...。」


そう言い残すと、相変わらず無表情のままディーブは自室へと向かって行った。
何で俺に頼んだのだろう。買い物なら他の奴でも一緒に行ける筈だ。


「あっ...」


察しがついた俺は、小さく声を漏らす。
ドールはまだ左腕が治っていないし、そもそもギフト以外とは外出なんてしない奴だった。
かと言ってギフトはまだ傷が塞がっておらず、ベッド拘束状態だった。銃で撃たれても、痛みを感じていない為、前回のターゲット戦の時に傷が酷くなってたらしい。今だに傷が塞がらないと、ディーブが呟いていた。

大きい溜息を吐く。
どう考えても今のこの現状では、俺しかいないのだ。
俺はニュース番組が終わっていたTVを消すと、ソファーに横になって眠った。
約束の10:00まで、まだ2時間30分もあるのだから。