代わりと言ってはなんだか、溜息をこぼした。
肝心の白ウサギを見つける為に振り向くと、目の前に世界から切り離された白が居た。
余りの白さに目を疑った。
白い髪、白い肌、緋い目...本当に人間か?
背丈はガキと同じ位だ。まだまだ幼いが恐らく男だろう。
キョトンとした目で俺を見ている。
特に物珍しい物は持っていないと思うが...。
「めちゃカワじゃないっスかッ!!!?」
背中の衝撃と共に耳元で盛大に叫ばれた。
切り替えの早い女だ。さっき迄あれ程しどろもどろだったのによ。
マロンの声に驚いて白いガキは何故か俺に抱き着いた。
如何言う基準で俺が無害になったんだ。
「おい...。動けねぇーだろ。」
「はぅッ!!?こ、殺さないで下さいっス!!!」
此奴...腹を撃たれているんだよな。
良く元気で居られるもんだな...あ、俺も撃たれていたな。
部屋の入り口でガキと公爵夫人が俺達の様子を伺っている。
白いガキには言葉が通じない、仕方無いが行動で示させてもらうとするか。
くれぐれも泣いてくれるなよ...。
俺は一旦ガキを引き離し、目線を合わせる為にしゃがんだ。
良く見るとかなり痩せているな。
一瞬だけ幼い頃の自身がチラついた。
眉間に皺を寄せる。胸糞悪い記憶だ。
一息つくと俺は白いガキを抱えて、ガキと公爵夫人の元へ向かった。
終始マロンが五月蝿かったが気にするのも面倒になった。
「此奴で合ってんだろ。」
2人は肯定の返事を返した。
「本当に白ウサギみたいだね〜。」
「終わってたのか。」
「当たり前でしょ。少し遊んじゃったけど、」
其の血塗れの姿を見れば言わずとも解る。
こう言う所はギフトに似てるんだよな。
「要は済んだし、先に進むか。」
「宛でもあるのか?」
同じく血に濡れているキースが問い掛ける。
「無いぜ。でも、此処に留まるよりかマシだろ。」
「まぁ、そうだな。」
俺達はまた宛も無く歩み出した。
side:ギフト
アハハ!
愉しい、楽しい、実に愉快だ。
何度か襲撃を受けたけど、殆どが列記とした使用人だったから、暇潰しにもならなかった。
まぁ、でも違う意味で沢山遊んだから、良しとしようかな。
モガルの手を引きながら僕は鼻歌を歌う。
其の隣を歩いているフェスターニャが不満そうな視線を向けている。
何か気を損ねる事でもあったのかな?
もしかしてトイレとかかな。女性は男性と違って色々と大変だからね。
勿論深くは言わないよ。
そんなもの興味の欠片も無いからね。
モガルは黙ったままだ。
でも、きっと内では愚痴や不満を吐き出しているのだろうね。
誤解を産みそうだから言っておくけど、あくまで僕の推察で、尚且つ理解なんて微塵もしていないから。
僕にそんなに繊細な感覚があると思ったのかい。
無いに決まってるじゃないか。
馬鹿も休み休み言いなよ。
これは扱う駒をより扱いやすくする為に、僕が知っておかなくてはいけない事なんだよ。
“普通の人”ってのは自分を理解してくれないと不満を持つんだろ?
一概に皆がそうとは言えないけど...。
でも理解して欲しい時に理解してくれた相手には心を開き易くなるものだろう。
僕は良い事をしているんだよ。
「あの...離してもらえませんか?」
「良いよ。」
モガルの要求を受け入れる。
白杖を握りモガルは僕に顔を向ける。
「少し、単独で動いても良いですか?」
「何故?」
フェスターニャが威嚇しているのを手で制す。
「野暮用ですよ。貴方々を巻き込むのは気が引けますので...」
「野暮用ね...。」
「おや?信用に欠けますか?」
「誰もそんな事言ってないよ。君こそ僕を信用していないじゃないか。」
僕の挑発をモガルは鼻で笑った。
「其れは了承してくれたと取っていいのですか?」
「最初から誰も止めてないだろ。モガルは自意識過剰だな〜、そんなに自分が危険視されていると思っているのかい?
安心しなよ。君は、君の意志が無くとも僕の元に帰ってくるんだから。」
「自意識過剰とは...其のままそっくり貴方に返しますよ。」
モガルは僕に嫌味を吐いて別の廊下へと進んで行った。
僕は其れを見る事無く進んでいた方へ歩み出した。
相変わらずフェスターニャは不満の様だ。
十分に歩いた後不満が抜けないフェスターニャに問い掛けた。
「何か御不満かな?お嬢さん?」
「...誤魔化さないで下さい。」
「ちょっと巫山戯ただけじゃないか。そう不貞腐れないでよ。女の子には笑顔が一番なんだろ?」
「ちゃ、茶化さないで下さい!」
「解ったよ。モガルの事だろ。」
僕がそう言うとフェスターニャは小さく「はい」と答えた。
「あれは僕の予想範囲内だから別に気に病むことはないよ。」
「マスターが解っていても私が...解らないのが不満なのです...。」
フェスターニャは寂し気な顔でそう言った。
今一何が不満なのか解らない。
僕が解っているのだから不満な事なんて何一つ無いじゃないか。
...これは、理解を共有したいと思っているのかな。
正直必要無いと思うけど、フェスターニャの機嫌をこれ以上損ねるのは、後々面倒だから話しておくか。
「解った。話すから少しは機嫌を直してよ。」
「善処します...。」
「簡潔に言うならモガルは僕等を裏切るつもりだよ。」
「其れは流石に解ります。」
「そう?ま、良いや。
で、彼の野暮用だけど恐らくセルリア達を殺りに行ったよ。」
「...!?」
於保、意外に驚いたな...。
「まぁ其の事に関して心配なんてしてないけどね。きっと彼は半殺しにでもされて、床に無造作に寝転んでしまうと思うんだけど。」
「...其れでは回収は何時行うのですか?」
「何時も何も僕が後で連れて帰るんだよ。あんな貴重な眼球をみすみす放って置く訳無いだろ。」
「マスターは歪みの無い人ですよね...。」
何故か呆られてしまった。
心外だな。自分に素直だと言って欲しいものだね。
僕は高らかに笑った。
肝心の白ウサギを見つける為に振り向くと、目の前に世界から切り離された白が居た。
余りの白さに目を疑った。
白い髪、白い肌、緋い目...本当に人間か?
背丈はガキと同じ位だ。まだまだ幼いが恐らく男だろう。
キョトンとした目で俺を見ている。
特に物珍しい物は持っていないと思うが...。
「めちゃカワじゃないっスかッ!!!?」
背中の衝撃と共に耳元で盛大に叫ばれた。
切り替えの早い女だ。さっき迄あれ程しどろもどろだったのによ。
マロンの声に驚いて白いガキは何故か俺に抱き着いた。
如何言う基準で俺が無害になったんだ。
「おい...。動けねぇーだろ。」
「はぅッ!!?こ、殺さないで下さいっス!!!」
此奴...腹を撃たれているんだよな。
良く元気で居られるもんだな...あ、俺も撃たれていたな。
部屋の入り口でガキと公爵夫人が俺達の様子を伺っている。
白いガキには言葉が通じない、仕方無いが行動で示させてもらうとするか。
くれぐれも泣いてくれるなよ...。
俺は一旦ガキを引き離し、目線を合わせる為にしゃがんだ。
良く見るとかなり痩せているな。
一瞬だけ幼い頃の自身がチラついた。
眉間に皺を寄せる。胸糞悪い記憶だ。
一息つくと俺は白いガキを抱えて、ガキと公爵夫人の元へ向かった。
終始マロンが五月蝿かったが気にするのも面倒になった。
「此奴で合ってんだろ。」
2人は肯定の返事を返した。
「本当に白ウサギみたいだね〜。」
「終わってたのか。」
「当たり前でしょ。少し遊んじゃったけど、」
其の血塗れの姿を見れば言わずとも解る。
こう言う所はギフトに似てるんだよな。
「要は済んだし、先に進むか。」
「宛でもあるのか?」
同じく血に濡れているキースが問い掛ける。
「無いぜ。でも、此処に留まるよりかマシだろ。」
「まぁ、そうだな。」
俺達はまた宛も無く歩み出した。
side:ギフト
アハハ!
愉しい、楽しい、実に愉快だ。
何度か襲撃を受けたけど、殆どが列記とした使用人だったから、暇潰しにもならなかった。
まぁ、でも違う意味で沢山遊んだから、良しとしようかな。
モガルの手を引きながら僕は鼻歌を歌う。
其の隣を歩いているフェスターニャが不満そうな視線を向けている。
何か気を損ねる事でもあったのかな?
もしかしてトイレとかかな。女性は男性と違って色々と大変だからね。
勿論深くは言わないよ。
そんなもの興味の欠片も無いからね。
モガルは黙ったままだ。
でも、きっと内では愚痴や不満を吐き出しているのだろうね。
誤解を産みそうだから言っておくけど、あくまで僕の推察で、尚且つ理解なんて微塵もしていないから。
僕にそんなに繊細な感覚があると思ったのかい。
無いに決まってるじゃないか。
馬鹿も休み休み言いなよ。
これは扱う駒をより扱いやすくする為に、僕が知っておかなくてはいけない事なんだよ。
“普通の人”ってのは自分を理解してくれないと不満を持つんだろ?
一概に皆がそうとは言えないけど...。
でも理解して欲しい時に理解してくれた相手には心を開き易くなるものだろう。
僕は良い事をしているんだよ。
「あの...離してもらえませんか?」
「良いよ。」
モガルの要求を受け入れる。
白杖を握りモガルは僕に顔を向ける。
「少し、単独で動いても良いですか?」
「何故?」
フェスターニャが威嚇しているのを手で制す。
「野暮用ですよ。貴方々を巻き込むのは気が引けますので...」
「野暮用ね...。」
「おや?信用に欠けますか?」
「誰もそんな事言ってないよ。君こそ僕を信用していないじゃないか。」
僕の挑発をモガルは鼻で笑った。
「其れは了承してくれたと取っていいのですか?」
「最初から誰も止めてないだろ。モガルは自意識過剰だな〜、そんなに自分が危険視されていると思っているのかい?
安心しなよ。君は、君の意志が無くとも僕の元に帰ってくるんだから。」
「自意識過剰とは...其のままそっくり貴方に返しますよ。」
モガルは僕に嫌味を吐いて別の廊下へと進んで行った。
僕は其れを見る事無く進んでいた方へ歩み出した。
相変わらずフェスターニャは不満の様だ。
十分に歩いた後不満が抜けないフェスターニャに問い掛けた。
「何か御不満かな?お嬢さん?」
「...誤魔化さないで下さい。」
「ちょっと巫山戯ただけじゃないか。そう不貞腐れないでよ。女の子には笑顔が一番なんだろ?」
「ちゃ、茶化さないで下さい!」
「解ったよ。モガルの事だろ。」
僕がそう言うとフェスターニャは小さく「はい」と答えた。
「あれは僕の予想範囲内だから別に気に病むことはないよ。」
「マスターが解っていても私が...解らないのが不満なのです...。」
フェスターニャは寂し気な顔でそう言った。
今一何が不満なのか解らない。
僕が解っているのだから不満な事なんて何一つ無いじゃないか。
...これは、理解を共有したいと思っているのかな。
正直必要無いと思うけど、フェスターニャの機嫌をこれ以上損ねるのは、後々面倒だから話しておくか。
「解った。話すから少しは機嫌を直してよ。」
「善処します...。」
「簡潔に言うならモガルは僕等を裏切るつもりだよ。」
「其れは流石に解ります。」
「そう?ま、良いや。
で、彼の野暮用だけど恐らくセルリア達を殺りに行ったよ。」
「...!?」
於保、意外に驚いたな...。
「まぁ其の事に関して心配なんてしてないけどね。きっと彼は半殺しにでもされて、床に無造作に寝転んでしまうと思うんだけど。」
「...其れでは回収は何時行うのですか?」
「何時も何も僕が後で連れて帰るんだよ。あんな貴重な眼球をみすみす放って置く訳無いだろ。」
「マスターは歪みの無い人ですよね...。」
何故か呆られてしまった。
心外だな。自分に素直だと言って欲しいものだね。
僕は高らかに笑った。


