外に出ると当然の事ながら、辺りは暗かった。
昼間より気温が下がっている所為か、白い息がでる。
ただ宛も無く歩いた。気が付けば貧民街に来ており、無意識とは恐ろしいなと内心思った。

元から人気の無い此処は、夜になればより一層人がいない。
適当に入り組んだ道を歩く。
俺もギフトと同じ、欲求不満なのだろうか。誰かを殺したい衝動に駆られる。
腐っても殺人鬼なのだと、嫌でも思わされる。10年前も今もそれは変わらない。

何気無く視線を動かすと、脆い服を着たホームレスが視界に入った。
無意識に口角が上がる。


「やぁ、どうしたんだい?」


好青年を装ってそのホームレスに、話しかける。ホームレスは少し驚いたように此方を見た。
だが、その警戒心もすぐに無くなる。


「寒いんですか?俺のコートをあげますよ。」


ほぼ一方的にコートを渡す。
ただ渡すのではなく、コートで俺の姿が見えなくなるようにちゃんと考えて渡す。
楽しくて堪らなくて、ニヤつきが止まらない。

嗚呼、馬鹿な奴だな。抵抗もしないなんて、なんて哀れなのだろう。その姿はまるで、俺に殺される為だけにいるようで、酷く滑稽に見えた。
もうすぐ、殺してあげるよ。
何とも言えない快感が、体中を駆け巡った。