「見ろ!!帽子屋!!!怯えているじゃないか!!!どうするんだい!?」

「三日月ウサギ、夜は静かに御茶会をするものだよ。眠りネズミを見習ったらどうだい?」


三日月ウサギは腕を組んで考える素振りを見せたが、すぐに溜息を吐いて止めた。


「僕には無理だ!!」

「知っているよ。」

「ねぇ...殺るの?...殺んないの?」


眠りネズミの言葉に帽子屋と三日月ウサギは、顔を見合わせた。
お互いの目を見つめ合うと、同時に笑みを浮かべた。


「「殺るに決まっているよ/だろ!!」」


ペースが掴めず私は唯眺める事しか出来なかった。
台詞を同時に言い終えると帽子屋と三日月ウサギは何処からとも無く、ハンドガンを私に向け撃ち放った。

銃声と共に私は歩道か車道へ体を転がした。すぐに状態を整え拳銃をスーツの内ポケットから取り出した。
調整局員が持っているのもで、グロッグ17で装弾数は33発だ。

今は戦っている時間は無い。しかも相手は男で3人だ。流石に分が悪い。
其れに無駄な戦闘はマスターが嫌いな事だ。
此処は相手を出来るだけ負傷させつつ、場を逃れるしかない。


「あちらも銃を持っていたのか。」

「どうせ素人さ!!!」

「待って...2人共狡いよ。ぼくも...殺る。」


眠りネズミはウトウトしながらも二丁銃を構え、3人同時に発砲した。
此れ程夜目が効く事を感謝した日はないだろう。
バッグを庇いながら弾丸を避け、少ない弾丸を相手へ撃ち込む。

計4弾。私は帽子屋、三日月ウサギ、眠りネズミの銃を持っている腕を狙った。
相手は私を素人と言って油断していた所為か、反応が遅れたようで3人仲良く腕を負傷した。
其の隙に私は全力で闇の中を走り抜いた。

『Sicario』へ辿り着く頃には私は久々に息を上げていた。
あんなに全力で走ったのは何時ぶりだろうか。
此れはもう一度鍛え直す必要があるな。大佐の元で暫く暮らして良いか、マスターに尋ねてみよう。勿論、この件が済んでから...。

玄関のドアをノックしようとすると、ドアが先に開いた。
ドアを開けた人物はマスターだった。


「やぁ、フェスターニャ。息を上げて如何したんだい。
まぁいい早く入りなよ。」

「ありがとうございます。マスター。」


マスターはきょとんとした表情をすると、微笑んで下さった。


「君は其の呼び方が本当に大好きだね。」


マスターはそう言うと、私の手を引いて下さった。久しぶりに触れたマスターの手は、以前と変わらず冷たかった。