第1巻 Sicario ~哀しみに囚われた殺人鬼達~

「ご主人~?大丈夫?」


お次はソファーの左側から、ひょっこり出て来た。
紫...赤紫や青紫の色が混じった髪の色をしている男の人だ。何故か頭にネ猫耳が付いている。
だが、良く見れば少し腐れている様に見える。

考えたくはないけど、絶対猫から取って染色したモノを頭に付けているよね。
頭を傾けても位置ずれしていない所を見ると、頭に縫い付けていると推測した方が良いのだろうか。


「ご主人優しさに弱いからね~。あ、別に白ウサギを悪く言ってるんじゃないから~。」

「は、はぁ...。」

「あぁボク、チェシャ猫~。よろね~。」

「どうも...。」


また変な人が出てきたよ。
話し方は緩いけど、絶対ヤバイ人だよ。
良く見れば尻尾も付いてる。猫さんが可哀想だよ。
カラーコンタクトをしているのか猫のように瞳孔が縦になっている。


「白ウサギは優しいね~。初めて見た~。優しい人ってさ~どんな味がするんだろ~?」


僕の頬をチェシャ猫さんが舐める。
背筋の筋肉が硬直し、悪寒が背骨を伝って頭へやって来る。
冷や汗みたいな変な汗も皮膚の表面から、堰を切ったかのように溢れ出る。


「甘~い。ケーキに角砂糖を乗せてるみたいだ~。」


きっと其れは糖尿病になる確率が、平均の倍になるのではないでしょうか...。
そんな事を考えていると、ソファーの左側からプリンの色をした髪の男の人が出て来た。


「やぁ!!僕は三日月ウサギ!!同じウサギ同士仲良くしようじゃないか!!」

「え、あっ...はい。」

「眠りネズミ、君も白ウサギに挨拶したまえよ!!」


三日月ウサギさんはランプに1番近くに居る、眠り掛けている灰色の髪の毛の人物に声を掛ける。
あの人が眠りネズミさんだろうか。
三日月ウサギさんが仕方が無いと言った感じで溜息を吐くと、眠りネズミさんの襟首を掴んで僕の元まで引き摺って来た。


「眠りネズミ!!挨拶は1番大切な事だぞ!!」

「...ん?...あぁ、宜しく...。」


寝惚けながらも僕に挨拶(?)をしてくれた。
眠りに入り掛けている眠りネズミさんの元に帽子屋さんもやって来た。
三日月ウサギさんと視線を交えると、怪しい笑みを浮かべた。


「三日月ウサギ、眠りネズミを起こしてあげようか。」

「僕に良い案があるぞ!!」

「如何言うものかい?内容次第で私も手伝おう。」


何故か乗り気の帽子屋さんは三日月ウサギさんの提案を聞き出す。
三日月ウサギさんは生き生きとした表情で言った。


「ドラム缶の中に入れて、暖めるんだ!きっと熱さで目を覚ますに違いないよ!!」


其の言葉に帽子屋さんは楽しそうに答える。


「其れは其れは名案だ。こんがり焼けた眠りネズミをチェシャ猫に食べさせる事が出来るよ。」


人肉は駄目ですよ。
其の前にお仲間さんを殺すのは駄目です。
殺し自体駄目ですけど...。