第1巻 Sicario ~哀しみに囚われた殺人鬼達~

フェスターニャの何処が嫌いなのだろうか。
使い勝手が良いし、作業とかはすぐに終わらせてくれるし、あと強いし。
文句無しの人材だと、僕は思うんだけどな。

ドールの考えている事なんて、僕が一生かかっても理解出来そうにない。
まず、しようとしないけどね。


「フェスターニャって、調整局準局長の秘書じゃなかったか。
ミステリアスで良さ気な女って噂聞いたが...。」

「ナタリアは何でも知ってるね、あっ偶然か!!ごめん、ごめん。」

「お前、マジで殴るぞ...。」

「殴っても痛くないよ~。」


ナタリアが不機嫌だ。
おかしな奴だな、僕が痛みを感じない事を知ってて、言ってるのに。
勝手に自爆してる。其れを僕の所為にされるのは、頂けないな。
自業自得じゃないか。


「ね、ね、ねっ!!ナタリアッ!!ナタリアッ!!!薬~ッ!!クスリ~!!」


犬みたいに息を上げながら、チェルがナタリアに縋り付く。
そう言えば重度の薬物中毒だったな。


「グズリ゙~ッ!!!ナタリア!!!!!!あ゙ぁ゙...ナタリア!!ナタリア!!ナタリア!ナタリア!ナタリア!ナタリア!ナタリア!!」

「うるっさいな...。ほれ、こっち来い。
ギフト、奥の部屋借りるぞ。」

「どうぞ。」


奥の部屋を指差して、ナタリアに笑い掛ける。
ナタリアは叫び散らすチェルを引き摺りながら、奥へ連れて行った。ナタリアの手伝いをしに、ディーブも着いて行った。

3人が奥へ行ってしまうと、一気に静かになった。
よりによってドールと2人きりになるなんて...。


「兄さん...」

「...何だよ。」


僕と同じ金色の目で笑い掛ける。
大嫌いだ...子供の頃はまだ我慢できたけど、あの施設で少し優しくしたらこれだ。


「昔話してよ。ボク等の話。」

「嫌だよ、話しても得にならない。其れに知ってる事だろ。」


瞳を伏せ、残念そうな顔になる。
嫌い、嫌い...大嫌いだ。何でこんな奴が僕の弟なんだ。
ムカつく、まるで此奴(ドール)に囚われてるみたいだ。新しい世界へ足を踏み入れても、すぐに足に絡み付いてくる。


「...うん。じゃぁ、ボクの事好き?」


嫌いだ。でも、言えない...。
言えない、いや違う言う事が出来ない。
血の繋がりが煩わしい、クソ、クソ...クソったれ。

僕は内心とは裏腹に、笑顔でドールに答えた。
何時も通り微塵の違和感もなく。


「あぁ、好きだよ。だってお前は僕の最高の持ち駒だからね。」

「ありがとう♥兄さん♥」


ドールはさぞ嬉しそうに、僕に抱きついてきた。
人懐っこく子犬みたいに僕に擦り寄る。
嗚呼...、吐き気がする。