第1巻 Sicario ~哀しみに囚われた殺人鬼達~

「依頼相手として、友人として貴方がたを信じましょう。」


バーサルトは似合わない澄んだ瞳でギフトを見た。


「僕等は君の期待に応えよう。君の大事なものを守って見せようじゃなか。」


ギフトはこの上無く満足そうな瞳でバーサルトを見た。


「んフフ~、何時までも此処に居るわけにはいかないね。さぁ、帰ろう!」

「兄さんはボクが運ぶね♥」


ドールはまだ輸血を行っているギフトを横抱きにした。輸血の点滴針が抜けない様に、注意を払いながらだ。
俺は懐に埋まっているディーブを抱えて立ちあがった。


「じゃぁ、バーサルト。次は余計な事持ち込まないでくれよ。」


ドールの腕の中でギフトはバーサルトに笑みを投げかける。


「其れは貴方も同じ事ですよ。」


バーサルトもギフトに劣らず微笑みを返す。
俺からしてみれば、2人共大して変わらない気がする。腹の中が黒過ぎる。
俺もとやかく言える立場でも無いのだがな。

其の後、バーサルトは教会の外まで俺達を送った。其の間誰も話す事は無かった。
ギフトは唯楽しそうに微笑んでおり、ドールもギフトと共に微笑んでいた。
ディーブは俺の腕の中でぐっすりと眠っている、俺も早く帰ってベッドに入りたい。

『不思議の国』なんて変な殺し屋なんか知った事か。
“白兎”とか訳解らない事ばかり増えていく。俺の拙い頭では状況なんか理解出来る筈も無い。


「...面倒臭ぇー。」


帰りの途中、俺はふとそんな事を呟いていた。
ドールの腕の中のギフトが俺に視線を持ってくる。


「仕事を面倒臭がるなよ。フラストレーションが溜まっている君に、沢山殺させてやるから。期待しておいてね。」

「そこそこ期待しといてやる...。」

「元気ないじゃないか。お疲れかい?」

「あぁ、何か疲れた...。俺帰ったら寝る。」

「どうぞ、御自由に。僕も帰ったら取り敢えず寝るよ。ディーブにこれ以上は心配かけれないからね。」


拘束ベッドが嫌なだけだろう。いくら笑顔を保てたとしても、内心は相当キてたんだろうな。
俺でさえ欝になりかけたからな。自由を奪われると人間どうにかなってしまうのかもひれない。
俺は馬鹿だからよくは解らないけど...。