第1巻 Sicario ~哀しみに囚われた殺人鬼達~

僕とバーサルトさんは皆の話の輪へ入った。
子供達は輪の中にいなくて、いるのは『Sicario』の皆と調整局員の2人、バーサルトさんだ。何だか異様なメンツだな...。
キースと言う調整局員の人が、咳を1つするとバーサルトさんに向かって話を始めた。


「レリィ神父、少し宜しいでしょうか。」

「何でしょう?」

「近頃『不思議の国』と称している殺し屋がのさばっている事をご存知ですか。」


『不思議の国』...、花吐き少女が載っていた新聞の別の記事に載っていたような。
セルリアの記憶越しからしか見ていないから、良く思い出せない。

確か、ある本の登場人物達を真似ているとか書いてあった気がする。駄目だ、記憶が霞んでいて思い出せない。
あの時から変わっておけば良かった、今頃後悔しても遅いのだが...。


「新聞で良く見かけますね。其の殺し屋が如何かしたのですか?」

「最近『不思議の国』の行動が目に余るんです。この前などは調整局の前で殺人が行われました。」

「準局長も激おこだったスよ!!人殺しそうな目してたっス!」

「マロン、黙れ。」

「キース先パイ冷たいっス!」


“準局長”と言う言葉出た瞬間、何故かギフトさんの眉が少し動いたのが見えた。
キースさんはスーツの内ポケットから1枚の写真を取り出した。
写真に写っていたものは、7~9歳位の少女だ。


「調整局の防犯カメラに写ったものを拡大して印刷したものです。『不思議の国』のメンバーと思われる少女です。他のメンバーは残念ながら顔は写っていませんでした。」


キースさんは悔しそうな顔をした。
バーサルトさんはキースさんから写真を受け取ると、キースさんの顔を覗いた。


「何故わたしにこれを?」

「貴方は此処らで大勢の子供達と接している...もしかしたら、見覚えのある顔かもしれないと思ったので。」

「妥当な考えですね。」


バーサルトさんは微笑みながらそう言うと、写真を持っていない左手で眼鏡を掛け直し、少女の写真を注意深く見つめた。