第1巻 Sicario ~哀しみに囚われた殺人鬼達~

side:ケビン
セルリアと交代して、僕は約1日ぶりに外に出た。
セルリアと話していた時間は意外と短かった様で、周りの人達は僕に違和感を抱いてはいないようだ。

しかし近くにいた筈のマロンさんとディーブ君は、子供達と一緒に別の場所で遊んでいるのが見えた。
代わりに初めて会ったバーサルトさんと言う人が僕の近くにいた。


「楽しめてますか?」


不意にバーサルトさんは僕に問いかけた。


「はい。子供達も皆元気で生き生きとしています。平和って感じがして私は好きですよ。」


バーサルトが驚いた表情で僕を見つめる。
セルリアの記憶通りの一人称を使ったし、怪しまれる事はしてい無いつもりだけど...。
如何したのだろう。

しゃがんでいる僕と同じ目線になる様に、バーサルトさんも腰を降ろした。


「...?セルリアですよね。」

「...えっ?」


意表を突いた質問に僕は、まともな返事を返せなかった。
バーサルトさんは顎に手を当て、不思議そうに僕を見つめる。

まじまじと顔を見られるのは、正直余り良い思いはしない。


「な、何でそんな事聞くんですか?」

「セルリアは敬語を使いません。演技にしては振る舞い方が自然です、そもそもセルリアに演技など無理な話でしょうが...。」

「え、あの...何て言えばいいのか。」


どう答えを返せば良いのか解らず、僕は視線をバーサルトさんから地面へと移した。
こういう時、何と答えれば無駄な誤解を生まずに、事を収めれるのだろうか。


「そんな深刻な顔をしないで下さい。わたしは詮索する趣味などありません。懺悔なら別ですけどね。」

「ありがとう、ございます。優しいんですねバーサルトさんって、」

「まるで別人みたいです。貴方に微笑まれると何だか、心が安らぎます。不思議ですね。」


バーサルトさんは僕の頬に手を添えると、優しく微笑んだ。
バーサルトさんの黒い革製の手袋はこの気温で冷たくなっていた。