第1巻 Sicario ~哀しみに囚われた殺人鬼達~

余りに過酷な現状に着いていけなくなった俺は、無意識の内にあの暗闇の中に逃げ込んでいた。

目の前にはガキ共でもなくマロンでもなく、ケビンだ。
俺の顔色が良くないのかケビンは心配そうな顔で、俺の顔を伺っている。
外で何があったのか大体解っている筈だから、ケビンは変に詮索する事は無かった。


“セルリア、大丈夫?”

“大丈夫だったら来るかよ...。”


俺らしくない声が出る。其の声を聞いてケビンは、俺の精神的許容量が限界なのだと察してくれた。


“其れもそうだよね。流石にあれは...。”

“俺はもう無理だ、変わってくれ。”

“そう言うと思ったよ。だけど、僕に変わったらムッシュさんが出る確率が高くなるよ。”


あのギャンブラーの事か、大した問題でもないのだがな...。


“ムッシュは俺が押さえておくから、大丈夫だ安心しろ。”

“何だかムッシュさんに、申し訳ないな。”


ケビンは苦笑いを浮かべた。
何時まで経ってもケビンは甘いままだ。誰対しても優しく平等に接する。
殺人鬼の俺に対してもだ。


“解った、じゃ行ってくるね。”

“悪いーな、頼んだぜ。”


俺がケビンに手を振ると、ケビンも微笑んで振り返してくれた。