第1巻 Sicario ~哀しみに囚われた殺人鬼達~

俺はマーシャルの居る小屋に帰り着くと、先程村人から貰った野菜を小さなテーブルに置いた。
マーシャルは既に起きていて、お腹に手を当てて俺を見つめていた。
お腹が空いたと言う事だろう。

俺は台所の水道の元に行くと、コップを取り水を注いだ。
其れをマーシャルに渡す、マーシャルは何か言いたげな目で俺を見つめる。

俺はしゃがんでマーシャルの両肩に手を置いた。


「...お前は、か弱くしてなきゃ駄目なんだ。
其れに其の喉では満足に食事も出来ない。
解るかいマーシャル...お前の為なんだよ。
俺だってお前にこんな酷い事したく無いんだよ。
我慢してくれ...俺が今まで間違った事なんか言った事無いだろ。」


マーシャルは静かに頷いた。
本当に良い子だ、俺は良い幼馴染みに巡り会えた。

マーシャルは俺の言う事なら何でも聞く。
俺が優しいから、そして正しい事を言ってきたからだ。

俺は立ち上がると台所へ行き、包丁を取り出した。
マーシャルへ振り返る。


「マーシャル、昨日会った人達を覚えているかい?」


マーシャルは俺の持っている包丁に怯えながら、ゆっくり頷いた。


「あの人達は悪い人なんだ。俺等に酷い事をしようと企んでいるんだよ。」


マーシャルの表情が驚きに染まる。マーシャルの口が動いた。

《ともだちって いってくれた のに》

俺は悲しそうな表情を作るとマーシャルに近付いた。