第1巻 Sicario ~哀しみに囚われた殺人鬼達~

side:シヴァル
朝から良くない奴等と出会った。
まさか、まだこの村にいたなんて...徹底的に追い出しておけば良かった。
さっきは居なかったが、あの長身の男は厄介だ。
マーシャルの事に気付いたかもしれない。非常に厄介だ...。

如何する、いやそんな悠長に考えている暇など無い。
早急に手を打たなくては俺の立場が危ない。
この貴重な満足感を奪われるわけにはいかない。

村人は、忌まわしく思われているマーシャルの付き人になった健気な姿に、関心や心配の目を向けてくれる。
漸くマーシャルも手の内に出来たと言うのに、今更手放せるわけが無いだろう。


「...クソったれ。」


もし勘づかれているのだとしたら、みすみす都市へ帰す事は出来ない。
俺の事を喋られでもしたら、俺はたちまち悪者だ。

不意に視界に農家が入った。
この村の農家は家畜を解体して、都市へ搬送する。

嗚呼、良い事を思いついた。
如何やら運命は俺の方へ動き始めたようだ。

思わず口角が上がる。
農家から鮮やかな鮮血が流れ出てくるのが見えた。