マーシャルの小屋から離れ、小さな噴水のあるあの広場へ戻って来た。
其処で漸くギフトさんはアヴァンの襟首を離した。
此処に戻る前に離してあげれは良かったのではないのだろうか。

アヴァンはうなじを手で撫でながら、僕達の方を向いた。


「襟首掴まなくてもいいじゃないか...。」

「君はすぐ逃げるだろう。鼠みたいに、」

「そんな汚い物と一緒にしないでくれ。アタシが潔癖症と知っての例えかい?」

「いい例えだと僕は思うよ。」


話についていけない僕は唯呆然とギフトさんとアヴァンの会話を見ていた。
アヴァンは掛けている眼鏡を、右手の指でくいっと上げた。


「えっとー...、ケビンって言ったよね。」

「はい、そうですよ。」

「同じ顔の奴に2度目の自己紹介と言うのは、些か良い気分とは言えないがそうも言ってられないな...。
アタシはアヴァン・ヴァリア。『ヴァ』の発音間違えたら即刻処理だからな、そこ宜しく。」

「此方こそ、僕はケビン・エストロスです。会う機会は少ないと思います...あ、セルリアの事宜しくお願いします。」


僕はアヴァンさん...一応さん付けした方がいいよね。
アヴァンさんに手を差し出した、握手をしようと思ったのだが、アヴァンさんは申し訳なさそうに首を横に振った。


「すまない...さっきギフトに言った通り、アタシは潔癖症でね。握手は無理なんだ。」

「あ、すいません...!」

「君が謝ることはないよ。」


アヴァンさんはそう言って微笑んだ。