数十分が経って漸く白虎が奥から出てきた。
しかし、一緒に連れて行った筈のサラフィリアの姿が見えない。


「早く来なさいよ、ほら。」


白虎が店の奥に向かって、手を伸ばしながら言う。
良く見ると奥の方に誰かが立っている、その顔は暖簾によって隠されているので誰だか判別出来ない。

痺れを切らした白虎が、其の誰かの腕を掴んで、強制的に此方に引っ張り出した。
出て来た人物は女性だった。
薄いメイクに、長い金髪は頭の上で団子にされて、服は黒をベースにした落ち着きを感じるコーディネートにされている。

一瞬誰か解らなかったが、黒のメッシュを見て其の女性が誰なのかが解った。
あのサラフィリアだ。


「白ちゃん、ウチ恥ずいで...こんなん。」

「似合ってるんだから、恥ずかしがる必要ないわよ!自信持ちなさい。」


人はこれ程まで変貌するのかと、俺は驚きを隠せなかった。
別人と言ってもおかしくは無い程だ、本当に今まで一緒にいたサラフィリアなのか。
白虎は笑顔で俺達を見つめる。


「ね!意外と解らないものでしょ。」

「まさかこれ程とは...白ちゃんメイク上手くなったね。」


ギフトも俺と同様に驚きを隠せていなかった、それもその筈誰がここまで変貌すると予想しただろうか。

俺の後ろに隠れているディーブも感心の声を漏らしていた。
だが、黒虎は無反応で変貌を遂げたサラフィリアを凝視している。
黒虎の視線が怖いのか、サラフィリアは下を向く。


「...合格だ。」


黒虎は其れだけ言うと、サラフィリアから視線を外した。
白虎がサラフィリアの手を掴んで、下を向く顔を見つめる。


「黒が、ああ言ったんだから大丈夫よ。...だから、顔を上げて笑いなさい。笑顔は女の幸せの象徴なのよ。」


白虎の言葉を聞いたサラフィリアは、まだ少し慣れていない笑顔で笑った。
恥ずかしさからなのか、嬉しさからなのか解らないが、頬が赤くなっていた。