「兄さん。其奴は指名手配犯だろ、如何やって隠し通すんだ。」

「私を誰だと思ってんの。そんなの簡単よ、其れに少し見た目を変えるだけで意外と見つからないものなのよ。指名手配犯って...。」


ウインクをしながら白虎は黒虎にそう言ったが、俺も黒虎と同じ意見だ。
サラフィリアの顔は下手すれば、カルラ大国全国民が知っていると言っても過言ではないのだから。

其れでも白虎は自信ありげに、いや、絶対見つからないといった確信をもって言った。
何か策があるのだろうか。


「ちょっと、待ってなさいよ。」


白虎はサラフィリアの腕を引いて、店の奥へと消えてしまった。
何をするというのか...。

黒虎は腕を組むと何故か俺に視線を向けた。
先程白虎が黒虎は目が悪いと言ったいたが、其の視線は其れだけではないような気がした。

軍人としての貫禄だろうか...今は元だが。
黒虎は俺の顔が見えないのか今度は俺の傍に近寄って、顔を見てきた。


「似ているが違う...。」

「黒虎兄さん、執拗いよ。」

「すまない...気になっただけだ。」

「黒にぃは執着するタイプだもんね。ね、兄さん♥」


ドールは何時ものようにギフトの腕に抱きついた。黒虎はまだ納得のいっていないと言った顔で俺から離れた。

本当に執拗い人間だな...もう10年も前の事なのに、だが逆に10年経っても人の記憶から褪せない事を俺は犯したのだと、実感させられた。

俺がケビンの他人格になっていなければ、こんな不思議な経験は出来なかっただろう。
奇妙な運命を背負ったものだと、俺は溜息を吐いた。