我に残されているのは

この、家宝と言われる時雨桜[シグレザクラ]

ただ一つだけだ

近くの森に身を隠すように滑りこみ

カサッ…。

物音に反応し刀を鞘から取り出すと

相手の姿をこっそりと見つめる

「お姉様」

思わず身体を茂みの外に飛び出させ

見つめるとそこにはあの時失った筈の

織田の軍足軽に捕まる妹の姿だ

ぞろぞろとその声を聞きつけ足軽たちが集まりだす

その中で一番いい武装をしているものが話しかける

「お前が中原一族の娘か」