「ちょっとサリーさん! 何でそんなに普通にしてられんの?!」
登校中だったらしい布団屋の娘・明子は、出くわして少し話をするや否や、なぜかいきなり発狂していた。
それを見つめながら沙里は、若い子は朝から大声が出せて羨ましいなと、おばさんくさいことを思いながら、コンビニ袋の中からユンケルを取り出した。
「いや、だって今日すごい天気いいし」
「天気の話なんてどうだっていいの! またあの手紙あったんでしょ?! なのに何でサリーさんはそれを気にしてないのかって聞いてんのよ!」
「だからね、天気が」
「だからもクソないでしょ!」
怒鳴られてしまった。
あたし一応、この子より10も年上なんですけどね。
と、沙里が思うのも無視したように、明子は、
「それ、ストーカーされてんじゃん! わかってんの?! 毎日、何してるか監視されてんだよ! キモイじゃん!」
「………」
「なのに何でサリーさんは、そんな得体の知れないやつからもらったユンケル一気飲みできんの?! 毒入りとかだったらどうすんのよ!」
「………」
「警察に言いなよ、警察に! 何で言わないの?! どういう脳みそしてんのよ!」
うるさいなぁ、もう。
と、言ったら余計に怒られそうだから、沙里は口を尖らせる。
「でもね、あたしのこと気遣って毎日差し入れとかくれるんだよ? 悪い人じゃないよ、スーさんは」
「スーさん?!」
「“ストーカーかもしれない人”の、スーさん。名前わかんないから、最近はそう呼んでるの」
沙里の言葉に明子はあんぐりと口を開け、
「馬鹿じゃないの!」
叫びは商店街中にこだました。


