店に飾っていた百合の花が枯れてしまった。
花なんて、日光に当てて水を与えてやればいいのだろうと簡単に考えていたが、どうやらそれだけではダメだったようだ。
だからって、何をしてやることが最良だったのかは、どんなに考えたところで、よくわからないのだけれど。
神尾としては、小学生の頃に観察日記を書くためにアサガオを育てたくらいしか植物というものに携わった経験がないのだから、仕方がないのかもしれないが。
どうしたものかとは思ったが、今まで店内を豪華に見せてくれていた花がそこからなくなると、どうにも華やかさまで失ったような気がする。
神尾は再び花屋へと向かった。
前回も百合を購入した、商店街の中にある『斉木生花店』に入る。
今度はできるだけ長く、枯らさないためにも、育成方法まで聞いておこうと思ったからだ。
「いらっしゃいませ」
神尾が店に入るなり、こちらに気付いた女性店員は、
「あ、マスターさん」
「どうも」
「確か、少し前に百合の花を買ってくださいましたよね。あれからどうですか?」
覚えててくれていたなんて。
と、思う一方で、その問いには、少し胸が痛んでしまった。
「それが、実は、あの百合、枯らしてしまって。ちゃんと日当たりのいい場所に置いて、水もきちんと与えてたはずなんですが。それで、その、もう一度」
ごにょごにょと言う神尾。
女性店員は、なるほどなと言わんばかりの顔で苦笑いし、
「百合はデリケートな花なので、直射日光はなるべく避けた方がいいんですよ」
「えっ」
「って、ちゃんと説明してなかった私が悪かったですね。すいません」
単に花の見た目の豪華さだけを見て、植物なんて簡単に育てられるだろうと思って自分が聞かなかっただけなのに、逆に謝られると、申し訳なくなる一方だ。


