チラシは商店街のほとんどの店に配り終えた。
あとはそれを見た里親希望の人からの連絡を待つばかりだ。
そこで、結は『遠藤書店』で電話番ついでに店番をすることにした。
初めは結のその申し出に渋い顔をしていたハルだったが、実際、やることが山ほどあるらしく、強く断られるようなことはなかった。
結も結で、里親のことが気になるし、どうせ実家でぐうたらばかりもできないしで、ちょうどいい暇潰しみたいなものだったから。
結は、ハルと過ごす中で、改めて10年という歳月を不思議に思った。
すっかり大人の男になってしまったハル。
働いて、当たり前のようにお客と冗談混じりの会話を交わすハル。
知ってることより知らないことの方が多いはずなのに、他人だとも言えないようなこの微妙な距離感がひどくもどかしく感じてしまう。
「ねぇ、ハル」
こちらに背を向けて棚を整理しているハルに声を掛ける。
「あたしたちってさ、何で別れたんだっけ?」
「高校に入って、お互いに新しい友達ができたり、忙しくなったりで、自然に連絡取らなくなった」
「そうなんだけど。何かさ、明確じゃないよね、それって」
「まぁ、別れるって言葉もないままだったしな」
「あたしのこと好きだった?」
「好きだった」
でも、終わり方はあんな風だった。
今にして思えば、それはすごく変だと思う。
「幼かったんだろうね、あの頃のあたしたち。付き合い方もわからないまま付き合ってたっていうか」
なのに、ハルは何も言わなかった。
背中を向けたままのハルが今、どんな顔をしているのかはわからない。
「お前、何で仕事辞めてこっちに戻ってきたの?」


