「棚にどんな本を並べるかは、店主の判断次第。店主の好みでもあると思うの」

「………」

「私はハルくんのセンス好きだよ。ただ流行を追ってるだけじゃない。ちゃんと、自分がみんなに読んでほしいと思えるものを揃えてる」

「………」

「『遠藤書店』は、ハルくんの努力と愛が詰まったお店だよ。だからこそ、ハルくんも、『遠藤書店』も、みんなに愛されてるの」


逃げるようにダンスを辞めた自分。

「あいつはもうダメだ」と、これまでまわりから言われ続けてきた。


しかし、雪菜は、今のハルを認めてくれた。



「ハルくんは、自分のことや、自分のやってることに、もっと胸を張ってもいいと思うけどなぁ」


泣きそうだった。



「そうかもしれない」


昔も、今も、自分は自分だ。



好きだったものから目を背け、無理に嫌う必要はない。

新しいものを好きになる変化さえ、受け入れることが罪なわけはない。


先のことなどわからなくとも、その時々を全力で生きてきたのが、俺だったじゃないか。


まわりが言う、「あいつはもうダメだ」の本当の意味は、ハルがハル自身ではなくなかったからだったのだろう。

少し、曇りが晴れたような気がした。



「ありがとう、雪菜ちゃん」


雪菜はまた笑い、「じゃあね」と言って、店を出てた。

しかし、気付けばハルもその後を追っていた。



「待って、雪菜ちゃん!」


声を上げる。

足を止めた雪菜は「うん?」と振り向いた。



「俺、雪菜ちゃんのことが好きなんだ」