本屋の仕事というのも楽ではない。



本の在庫管理や返品・交換、棚の入れ替え作業などは、ちょっとした重労働だ。



『遠藤書店』は、ハルが跡を継ぐまで、よくも悪くもただ古臭いだけの店だった。

とりあえず、本を適当に並べているだけ。


ハルはそれをすべて並べ直し、人気作のコーナーなども新しくした。


人に勧めるためにはまず自分が読んでおかなければならないし、人にも読んでほしいと思えばポップを作ったりもしなければならない。

常に新刊をチェックし、ランキングを考え、何を発注するか頭をひねる。



時には馴染み客の家に本を届けたりもしていて、これをひとりでこなしている自分に自分で時々感心してしまうこともある。




本に思い入れがあるかどうかは別にしても、祖父母の代からあるこの『遠藤書店』を潰すようなことはしたくないし、商売としてやっている以上、儲けを出したいのは当然だ。




店を継いで1年半。



こなれてきたなと、自分でも思う。

夢ばかり追い求めていたあの頃とは違い、現実的になったな、とも。


年齢の所為なのか、だから守りに入って、冒険心さえ薄れている気がする。


同時に、ダンスのことを考える時間が減っているのも事実だった。

やらなければならないことが多すぎてそれどころではないといった感じだろう。




それがいいことなのか悪いことなのかは、わからないけれど。




俺はこのまま一生、『遠藤書店』の店主でいるのだろうか。

それでいいと自分で思っているのだろうか。


やっぱり答えの出ないことばかり。