怒鳴り声は次第にか細くなっていく。



「俺は親から捨てられたんだよ。いらない人間なんだよ」


泣きそうだった。

肩を震わせるレイジに、ハルはため息を吐くと、



「お前さぁ、ちょっと頭冷やせよ」


と、さとすように言う。



「つまりレイジはさ、親に捨てられて悲しかったんだろ? なのにその辛さを知ってるお前が今度は自分の子を捨てて逃げるのか?」

「『捨てる』って……」

「死んで逃げたいってことは、捨てるも同然だろ。それとも、その子も『いらない人間』だからいいのか?」


言葉が出ない。

俺は今、俺がされたことと同じことをしようとしているのか?



「駆け落ちだからとか店がなくなるとかは、どうにでもなることだろ」

「………」

「でも、お前が今一番考えなきゃいけないのは、雪菜ちゃんと子供のことなんじゃないのか?」

「………」

「自分ばっかり辛いみたいな顔してんなよ。雪菜ちゃんが一番、不安だって何でわかんない?」


意図していなかった涙の一筋がこぼれた。

それでもハルは話し続ける。



「俺さ、妹ができるはずだったんだ。俺が5歳の頃、母ちゃんが妊娠してさ、女の子だってわかって俺もすげぇ嬉しかった」

「………」

「でも、いざ陣痛がきても子供産まれて来なくて。首にへその緒が絡まってるとかで緊急帝王切開になって」

「………」

「結局、妹は死産だった。母ちゃんももうちょっと出血が多かったら一緒に死んでたとかで」


ハルはそこまで言って顔を上げると、