ふらふらと目的もなく歩いているうちに、商店街の裏にある公園に辿り着いた。
レイジはそこで2回吐いた。
胃の痛みと恐ろしい現実がぐちゃぐちゃになって、もう立つこともできなくなってベンチに倒れ込む。
自分の遺伝子が今、雪菜の腹の中の生き物に受け継がれているなんて、考えただけでもおぞましいことだった。
やっぱり俺はあの時、死ぬべきだったんだ。
ふとそんな思考が脳裏をよぎった時、
「……誰かそこにいるのか?」
男の声。
続いてこちらに駆け寄ってくる足音。
「レイジ?!」
名前を呼ばれ、目線だけ移すと、顔を覗き込んできたのはハルだった。
ハル、と、レイジは呼び返したつもりだったが、声にならずに口がわずかに動いただけ。
「おい、レイジ! どうした?! おい!」
ベンチでぐったりしているレイジの体を、ハルは容赦なく揺する。
おかげでまた胃液が込み上げてきて、必死で嗚咽をこらえながら、
「ハル……」
今度はうなるようにしてどうにか声にはなったが、レイジはハルの方に手を伸ばしてそのまま、倒れるようにベンチから転げ落ちた。
「ちょっ、レイジ?! レイジ!」
うるさいんだよ。
だから揺するなって言ってんだろ。
と、恨み節は言葉にならないまま、レイジはそこで意識を失った。


