余裕を欠いている。
はたとそれを自覚したレイジは、かすれた声で「ごめん」と言った。
「……レイジ?」
ハルは不可解そうにレイジに声を掛けてくるが、
「ごめんね。でも俺、今、ほんとそれどころじゃないんだ」
体の弱い雪菜の心配をして、仕事を失うということにも焦って。
レイジは自分が思っている以上にいっぱいいっぱいになっていたのだ。
「何かあったのか?」
「………」
「何かあったんなら、俺、相談に乗るぜ?」
人の世話が好きで、そして心底優しいやつだなと思う。
けど、だからこそ、言えるわけもなかった。
弱音を言葉にしてしまえば、本当に、雪菜が言うようにそれに飲み込まれてしまいそうで怖かったから。
顔をうつむかせたレイジにハルは、
「お前がそういうことを言いたがらないやつだってことはわかってるよ。でも、マジでお前、最近ちょっとおかしいぞ? 大丈夫かよ」
ひどいことを言ったのに、ハルはそれを気にも留めずに逆にレイジの心配をしてくれる。
レイジは自分の幼稚さに泣きたくなった。
「大丈夫だから」
「………」
「ごめん。でも、ほんと今日は帰らせて」
こめかみを押さえるように手で顔を覆い、レイジはそれだけ言って、その場から逃げるようによたよたと歩を進めた。
ハルはまだ何か言いたげな顔をしていたが、でもそれ以上、何も言わなかった。
はたとそれを自覚したレイジは、かすれた声で「ごめん」と言った。
「……レイジ?」
ハルは不可解そうにレイジに声を掛けてくるが、
「ごめんね。でも俺、今、ほんとそれどころじゃないんだ」
体の弱い雪菜の心配をして、仕事を失うということにも焦って。
レイジは自分が思っている以上にいっぱいいっぱいになっていたのだ。
「何かあったのか?」
「………」
「何かあったんなら、俺、相談に乗るぜ?」
人の世話が好きで、そして心底優しいやつだなと思う。
けど、だからこそ、言えるわけもなかった。
弱音を言葉にしてしまえば、本当に、雪菜が言うようにそれに飲み込まれてしまいそうで怖かったから。
顔をうつむかせたレイジにハルは、
「お前がそういうことを言いたがらないやつだってことはわかってるよ。でも、マジでお前、最近ちょっとおかしいぞ? 大丈夫かよ」
ひどいことを言ったのに、ハルはそれを気にも留めずに逆にレイジの心配をしてくれる。
レイジは自分の幼稚さに泣きたくなった。
「大丈夫だから」
「………」
「ごめん。でも、ほんと今日は帰らせて」
こめかみを押さえるように手で顔を覆い、レイジはそれだけ言って、その場から逃げるようによたよたと歩を進めた。
ハルはまだ何か言いたげな顔をしていたが、でもそれ以上、何も言わなかった。


