その空間は涙に溺れると言ってもいいほどに、皆が涙に暮れていた。故人となってしまった父さんがそれだけ皆に愛されたと言う事だと俺は誇りに思う。涙を流しながらも笑顔を浮かべ静かに横たわる父さんに語りかけた。「旅は始まりましたか?母さんには会えましたか?」涙を袖で拭いながら続ける。「きっと旅は始まって、今頃母さんと並んで歩いてるんですよね・・・いってらっしゃい!父さん、母さん。」俺は父さんが言わなくともわかっていた。色々理由を付けてはいたが、結局の所嬉しそうにしていた一番の理由は『もう少しで母さんに逢いにいける』という事だったのだろうと。もう一度父さんに向けてゆっくりと笑顔を浮かべる。そして後ろを振り向くと未だに泣き崩れている妻と子供達に、三日前父さんと話した事、そして母さんとの事を話してやろうと笑顔を浮かべたまま立ち上がった。