チョコレート(仮完)



私は、静かに扉を閉めた。



そして、無表情で



また静かに階段を下りる。


「千里さん、悠斗にこれ


 渡しておいてもらえますか?」



「え?えぇ、いいわよ。

 
 でも、悠斗部屋にいるでしょ?」


「いたんですけど、私お邪魔虫なので。」


私は、さも困っているかのように笑った。


驚き、紙袋の中を見た千里さんが、


私を呼ぶ声がしたけど、


振り向かなかった。




いや、



振り向けなかった。




一筋涙が頬を伝う。



それを合図に



次々と涙が溢れてくる。