もう最悪……。
まわりの人もあたしたちの様子に気づいて、チラチラとこっちを見ている。
もうほんとに消えてしまいたい……!
そう思ったとき、弘樹くんはまたあたしの腕をつかみ、どこかへ連れて行こうとする。
今度は強い力で、振りほどこうとしても全然だめだった。
「なに…?ねえ……弘樹くん!」
「だってこうでもしなきゃ架純逃げちゃうでしょ?」
そう言って、連れて行かれたのは駅を出て少し歩いた所にある高架下だった。
人気のなさそうな雰囲気があたしを不安にさせる。
人目につかないところまで入ると、立ち止まり、弘樹くんは振り返った。
「…ごめん…架純。」
謝られるとよけいに切なくなる…。
「こんなに…させてんの俺なんだよな…。」
弘樹くんはあたしの涙を指で拭う。
「…なんであんなことしたの……?」
あたしは呆然とそんなことを聞いていた。
弘樹くんに触れられて、激しく加速する鼓動を抑えたくて……
とにかく気を散らせたかった。


