──…「ふぁーあ…」
あたしは塾から出ると、疲れを吐き出すように、力なくあくびをした。
夜だと少し肌寒いけど、勉強で疲れた頭を冷やすにはちょうどよかった。
弘樹くんのことも、学校では色々考えちゃうけど、塾の後はさすがに疲れてなにも考えられなくなる…。
いいや、もう…。
今日はもう帰って、家でゆっくりするだけだ……。
考えすぎるのも疲れたし。
駅の構内に入って、改札に向かうときだった。
「架純。」
後ろから聞こえるその声に足を止めた。
というより、その声に捕まえられたように……
あたしは身動きをとれなくなってしまったんだ……。


