──…「ただいまー。」
あたしはクタクタになって力なく玄関のドアを開けた。
もう8時半じゃん……。
いくら5月でもこんな時間になると外も真っ暗だ。
「お帰り。」
お母さんが台所から顔を出して言った。
今日はその声に笑うことができる。
塾をサボったときは目もあわさずに部屋に逃げちゃったけど…。
部屋に入って着替え、ベッドにダイブする。
この時間はとにかくボーッとして、体を休める。
あたしの場合、頭をフル回転させると体が熱を帯びてくるみたい。
動かしすぎた機会から煙が出てくるような感じ……?
だから布団の冷たさが気持ちよくて……。
勉強で凝り固まった心もやんわり溶けていく。
……花凜ってやっぱり…柴田先生のこと…
ボーッと天井を見つめながら、ふと思い出す。


