「殴る?」
「へ…?」
弘樹くんはそう言うと、あたしの手のひらを自分の頬にあてた。
「いいよ…ムカつくでしょ?」
頬にあてたままの手を動かすことができない。
弘樹くんの体温があまりに冷たくて…。
「……え…?」
あたしはゆっくりと弘樹くんの頭をなでる。
「弘樹くんは…優しすぎるよ…。自分だってこんなに傷ついてるのに…。」
今日1日振り回しちゃったのに……
文句も言わずについてきてくれた。
あたしは弘樹くんの彼女でもなんでもない…。
殴る権利なんてないよ…。
「優しくなんてないよ。」
「弘樹くん…もっと自分を大事にしなきゃ……。」
「……優しいのは架純だ…。」
ドキッ……!
なでていた手をつかんでゆっくりと繋ぐ……。
「ねぇ……聞いてくれる…?」
「え…?」
「絢とのこと……誰かに言わなきゃやってられないんだ…。」
そう言って、少し唐突に話してくれた…。


