「怒ってないよ……別に……。」
だから……そんな辛そうな顔しないでよ……。
「デート…するんでしょ?」
あたしはクッと顔を上げて、少し強気な風に言った。
弘樹くんは少し驚いて笑った。
「…うん、ありがとう。」
…好き。
やっぱりあたし好きなんだ……。
包み込むような笑顔も、少し甘い香水の香りも……
優しくてたまに意地悪な弘樹くんが
すごく好き……。
キミの仕草ひとつで、平気なフリしてるあたしの顔が一気に緩みそうで……
こみ上げてくる感情を必死に押し殺す。
「帰ろ、駅まで送るよ。」
そう言って普通に差し伸べられる彼の左手に
ゆっくりとあたしの右手を重ねる。