弘樹くんに手を引かれて、駅まで歩く間も沈黙が続く。


あたしはいっぱいいっぱいなのに、弘樹くんは鼻歌まじりに歩いている。


からかわれたんだ……。


そんな気がして疑わない。


あたしはどんどん不機嫌になる。


それでも弘樹くんは気づいてないのか気にしてないのか、ゆったり歩く。


これじゃあたしが駄々こねてるみたいじゃない……。


「じゃあね、架純。もう万引きなんてしちゃダメだよ?」


駅に着くと、彼はパッと手を離して意地悪そうに笑った。

 
なんだか腹の立つ相手に、説教されると万引きなんてしようとした自分にも腹が立った。


「もうしないよ……。」


なによ……。


人の初キス勝手に奪っといて、あたしだけ悪いみたいに……!


「じゃあ…ね。今日はありがとう……。」


気持ちが晴れないまま挨拶をし、背中をむけかけた時、弘樹くんは「待って」とあたしを止めた。


「これ、お母さんに見つからないようにね。」


彼はプリクラを取り出し、トントンッと指差した。


偶然なのか、わざとなのか、指差したショットはあたし達のキスプリの部分だった。