だけど、それから弘樹くんは特にそれについて何も言わない……。
何事もなかったかのように、さっさとプリクラ機から出て行く彼。
あたしも慌ててついていく。
どうして……?
さっきのってなに……?
なんでキスしたの……?
聞きたいのに、何ひとつ聞けない……。
弘樹くんが何も言わないから……。
「はい、どーぞ。」
弘樹くんは出てきたプリクラをあたしに渡す。
「…ねぇ。」
「なに?」
なに?じゃないでしょ……!
なんでそんなに普通の顔してられるの……!?
弘樹くんにとってはこんなの普通のことだから……?
「…なんでもない。」
そう思うとあたし1人で本気になってるのがバカバカしくなってやめた。
「あっ、そろそろ8時だよ。塾終わる時間なんでしょ?」
あっ……。
ケータイを開くとディスプレイが20:00という数字を表示している。
あっという間だった。楽しかった。
だけど……
「じゃ駅まで送るよ。」
そう言うと弘樹くんは「行こう」とあたしの手をとる。


