「例えば会社ではビジネスの思考が一部欠落しているような、そんな感覚に陥るんです。それはまるで脳みその端っこをスプーンですくい取られてしまったかのようにね。実際に、街を歩いていても視界のどこか一部がすっかり抜け落ちてしまっている。また人間関係においても何か得体の知れないガス体のようなものが頭の中を覆い、相手とのリレーションが図れないように邪魔をするんです。家庭では楽しいはずの家族との会話も電波の弱い携帯電話のように途切れて幸福感が満たされない」

彼は堰を切ったように話し出した。それは彼の弁明のようにも感じた。淡々と彼は続ける。