「私の…私のこれまでの事全てが無くなってしまいそうで捨てられないんですよ」

彼はまるで何かを総括するように言った。――私のこれまでの事全てが無くなってしまいそうで捨てられないんですよ――僕は彼の言葉を心の中で反芻した。これまでの事全て?

彼は3本目のタバコに火を付けようとして止め、すでに冷めてしまったコーヒーに口をつけた。

西日は更に傾き、オレンジ色の終末的な光が、リノリウムの床に我々の影を静かに落とす。