彼は言い終えると2本目のタバコを丁寧に消した。タバコの煙は思い思いに形を変えて宙へと漂い、そして消えていった。

「未完成のパズルはどうされるんですか?」

僕は沈黙を避けるように質問した。

「全部バラバラにして保管するんです。だからうちには未完成のパズルが山ほどあって困っているんです」

彼はどこかをぼんやりと見つめながら言った。僕は彼の視線の先を追ったが、そこにはただ匿名的な空虚だけしか存在しなかった。企業コンプライアンス要件のポスターがあったが、彼がそれを見ているようには思えなかった。

「なぜパズルとして意味の無いものをとっておくんですか?」

僕は主張した。
彼は少し悩んでいたが、何か別の事を考えているようにも見えた。

彼が話し出すのと窓から差し込んできた寒々しい西日が彼の影を長く引かせたのは同時だった。