製品プレゼンテーションはうまくいき、僕は契約を取ることが出来た。これは彼のソリューション能力で勝ち得た結果だ。パズルは一つもピースを失うことなく完成したのだ。

クライアントのオフィスを出る。刺すように冷たい真冬の強風は残り少なくなった街路樹の葉を揺らし、飛ばしていく。しかし辺りは不自然な静寂に包まれていた。すべての世の中の音量が意図的に下げられてしまったかのようだ。僕は早速プレゼンの結果を伝えるため彼に電話をする。

携帯電話から聴こえる発信音がやけに大きく聴こえる。

そしてその音は次第に大きくなり、僕全体を支配し始める。暗闇で様々な形をしたパズルが強い風に舞い、そして消えていく。何かが歪み始めている、そう感じた。そして彼の電話は二度と繋がる事は無かった。