「それでわざわざイギリスに行く理由は何なのよ。」
雪見が、暴れてくしゃついた長い黒髪に櫛を通しながら言った。
「”ホラ研は今まで資金が足りなかっただけだ、ホラー・・・つまり幽霊の出るホテルへ行こう!”・・・・と叫んでましたが。」
「もーっ!じゃあ今日のミーティングは何なのよーっ!!」
雪見が大声で怒りをあらわにしたとき。
「うわ!うるせ・・・っ。」
先ほど知恵が入室したのと同じ扉から、三年副部長、久阪祭(くさか まつり)が耳を抑えながら入ってきた。
「久阪先輩、チーッス!」
「はよーございまーす。」
「おはようございます!」
一年生三人、加山、暮山、知恵が同時に挨拶する。
協調性の欠片も無い。
「あー、はよー。ごめんごめん遅刻ー。」
「久阪先輩~!全くもう!部長も副部長もそろって変な人ばかりなんだから!」
「そう言うなよ雪見・・・・。あと五月蠅いって。こんな狭い第三理科室で叫ぶなよ・・。」
久阪は、まだ起きたばかりなのか、あくびをしながら奥の椅子に腰をおろした。
まあ、久阪の場合はいつも気だるそうな雰囲気を醸し出しているのだが。


