「遅れてすみません!」
雪見が一人悶々と思考していると、明るくよく通る声が聞こえた。
声の主は、琴野知恵(ことの ちえ)。
彼女もまた、ホラ研の一年部員である。
「あーもー良かった!やっと知恵ちゃん来てくれたし!」
雪見は、あてつけのように加山と暮山の方をちらちらと見ながら、知恵にそう言った。
知恵は、アハハ、と苦笑する。
「で、部長は?会ってない?」
「兄さんですか?兄なら今イギリス行ってますよ?」
走ってきたのか、上下する肩と共に、まだ荒れている呼吸を整えながら知恵はさらりと述べた。
「は?」
そう呆れた声をだしたのは、雪見ではなく、暮山であった。


