「私が、どこか廊下みたいなところを、歩いてるんです。」
そこまで言うと、知恵は寝間着の裾をくしゃりと握りしめ、部屋の向こうを見つめた。
「丁度、ここのホテルみたいな廊下なんです。」
雪見は、それは不思議ね、と軽口を叩こうとした。
しかし、あまりにも真剣で、それでいて少し怯えているかのような彼女の表情に、それを推し止められる。
「しばらくすると、私、自分が走って何かから逃げていることに気付くんです。」
途切れ途切れになりながらも、一つ一つ、言葉を紡いでいく。
「逃げなきゃって、体はどんなに辛くても走ってくんですよ。でも、私は、自分が何に追いかけられてるのか分からないんです・・・。」
雪見は、ずっと黙って話を聞いていた。
何故か、とても重要な、単なる夢とは考えてはいけない気がした。
「それで、途中で後ろを振り返ったんです。・・・そこには、同い年くらいのキレイな、ブロンドの女の子が立ってました。」
雪見の背筋に、わずかな悪寒がはしる。
「その子、ぼうっと私を見つめてるんです。私も、その子から目が離せなくて・・。」
もう一度話を止めたかと思えば、知恵は、動けなかったのかもしれません、と付け加えた。


