「兄さんですか?」
「うわぁ!?」
扉を閉じたとたんに、後ろから声がかかる。
あまりにも唐突で、しかも先ほどまで知恵は寝ていたから、雪見は大きく肩を跳ね上げた。
「び、びっくりした・・。知恵ちゃんか。」
「はは、すみません。そんなに驚くとは・・・。」
まだ寝癖のついたままの状態のところを見ると、おそらく今さっき目をさましたというところだろう。
「いや、いいけどね。」
「はい・・・。あの、それで・・・兄さんでしたか?」
「え?ああ、うんそう。朝食は八時半に二階のレストラン集合だって言ってたわ。」
「あ・・・はい。分かりました。」
気のせいかもしれないと少し疑ったが、雪見には少し知恵の顔色が悪く見えた。
それとは関係ないのかも知れないが、イギリス行きの数週間前から、どこか悲しそうな顔を時折する。
「知恵ちゃん、なんか調子悪い?顔色悪いような・・・。」
「え、あ・・・。」
少し過剰とも思えるような反応を示してから、知恵は実は、と言いにくそうに話を切り出した。


