雪見&知恵 side
「知恵ちゃん?今、琴野先輩が来てさ、夕飯は部屋に運んでくれるらしいわ。」
「わぁ、それはありがたいですね。もう時差で疲れてますし・・。」
寝転がっていたベッドから、知恵が起きあがる。
「あ、寝てていいよ。夕食来たら、起こしてあげるからね。」
「すみません・・・・。お言葉に・・・甘えて・・・。」
よほど我慢していたのか、知恵はすぐに静かに寝息を立て始めた。
妹を持ったような心地に、雪見が頬を緩ませた時だった。
コトン。
部屋の扉の隙間から、ちいさな封筒が落とされた。
ヨーロッパ風の、赤いシーリングスタンプが押されている。
「夕食の、案内とかかな・・・?オシャレ・・・。」
慣れぬシーリングスタンプを苦労して開くと、中には小さなカード。
本分は、たった1行。
『ne-m’oubliez-pas』
「何で・・・。ホテル名?」
それぞれの夜が更けていく。