「ホテル名?・・・・読めん。」
「え?久阪先輩って結構頭良かったはずじゃ・・。」
久阪が頭を捻りながら、雪見に地図を手渡す。
「うわ、何語・・・・?」
あきらかに英語の読みでは読めそうにない。
雪見だって、例えば学年上位を争うような天才では無いが、蘭松高校は進学佼だ。
その校内で400人中60位ほどだから、頭は割と良い方だと自負していた。
「フランス語、ですね。」
目を回す雪見の上から、長身の暮山がひょい、と地図を取る。
「・・・なんだろう。さすがにフランス語は勉強したことないんで。」
『ne-m’oubliez-pas』
「っていうか・・・何でイギリスでフランス語の名前?」
雪見が、呆れたようにつぶやく。
「世界史とかだと、イギリスとフランスって仲悪いイメージあるんだけど。」
久阪が、雪見の言葉に同意するかのように呟いた。
「まぁ、確かによく戦ってますよね・・・。百年戦争とか。」
暮山も、久阪の言葉に続いた。