「さて、と。ホテルに向かいますかー。」
久阪は背負ったシンプルな黒いリュックから日本人観光客向けの地図を取り出した。
「なんて名前のホテルなんですか?」
雪見が後ろからその地図を覗き込む。
久阪が、赤いマーカーペンでホテルの場所に印を打つ。
どうやら、現在地からさほど遠くは無いらしい。
雪見は、目的地が郊外でないことにほっと肩を撫で下ろした。
こんな急な旅行で、ロンドン観光や買い物すら出来なかったらどうすればいいのか、飛行機で悶々としていたのだ。
ホラ研、などと少々不気味がられる部活動に所属しているものの、雪見だって華の女子高生なのだから。