「これ……なに?」
私はその薬が何だか怖くて仕方なかった。
「……悪いな。」
全然悪いと思っているようには感じられない言い方で、シオンがそう言った。
「これ……」
「アフターピルだ。飲んでおけ。」
シオンは何でもない風にそんな事を言う。
そもそも、何でこんな薬をシオンが持っているのかすら、疑問だった。
そして何より、足を伝う不快感で私は酷く吐き気を催した。
越えてはいけない一線を越えてしまった気がして、私はどうしようもないくらい、打ちのめされた気分だった。
「な……んで……」
自分の声が震えているのが分かった。
だけれどシオンは私をじっと見つめたまま、面倒くさそうに溜め息を吐いた。
「仕方ないだろ?」
冷めた声でそう言ったシオンに、なぜか無性に腹が立った。
その瞬間、私の中で何かが壊れた。
それはダムが決壊したかのように、一気に私の身体を飲み込み、今まで溜めてきた感情が突然放出されてしまったかのような感覚だった。
自分が自分じゃなくなってしまうようなそんな恐怖と、身体中の血液が全部沸騰して蒸発してしまうかのようなそんな感覚だった。
「…………。」
気がつくと私は、無言でシオンを睨んでた。

