だけれど、凛は何か様子がおかしかった。
段々とこちらに近付くその人から、視線をそらさずに硬直している。
凛のそんな表情は見たことがない。
「凛?知り合いなの?」
相変わらず空気を読まない愁がそんな事を言う。
凛はその声で我に返ったのか、窓から視線をそらした。
そして、私は気付いてしまった。
凛の瞳が、なぜか揺れている事に。
知り合いなんだろうか?
「ねぇ、あの人こっち来るよ!」
まさと言う子が、窓の外を見ながらそう言った。
私は覚悟を決めて、もう一度窓の外を見る。
その人はこちらに向かいながら、ポケットから携帯を取り出すとそれを耳に当てた。
すると皆が静かになったこの空間に、携帯の着信を知らせるバイブの音が鳴り響いた。
皆が、一斉に私を見る。
私は誰とも視線を合わせないように、鞄に手を入れて携帯を取り出した。
私の手の中で振動する携帯には″月島紫音″の文字が映っていた。
私は震える指先がバレないように、何事もなかったかのように電話に出た。
「もしもし?」
″何をしている?″
「友達とご飯食べてただけだよ。もう帰る。」
″……早くしろ″
シオンは不機嫌全開な声音でそう言って、電話を切ってしまった。

