叶う。 Chapter1





「ダンスで転けただけだよ。」

凛はそう言うと、いつもみたいに優しく笑った。
その痛々しい笑顔を見て、私は凛が嘘を吐いている事に気がついた。

凛の傷は、どう見ても誰かに殴られた傷だ。
他の人なら騙されるかもしれないけれど、小さい頃から生傷が絶えなかった私には分かってしまった。

ぶつけた傷と殴られた傷は違う。


「ねぇ、凛?大丈夫?」

「……大丈夫だよ?」


平然と答える凛に、私は何だか聞くに聞けないもどかしさで、両手をぎゅっと握りしめた。

凛はいつも通りに鞄からコンビニの袋を取り出すと、お握りの袋を開けながら、携帯をいじり始めた。

いつもと同じ凛の行動が、何故か聞いてはいけない雰囲気を醸し出していた。


私はなんとか平静を保って、自分もお昼を食べようと鞄に手を入れた。

だけれど次の瞬間、教室が一気にざわついた空気に包まれた。


「かなう~、飯食いに行こうぜ!」


教室の後ろのドアから、顔を覗かせた和也が大声で私を呼んだのがざわついた原因だった。

凛がチッと舌打ちした。
私はどうしたら良いか迷ってしまったけれど、立ち上がった凛に腕を掴まれて「行くよ」と言われた。

私は慌てて鞄を持つと、凛に手を引かれたまま、真っ直ぐに和也の元に向かった。